金融円滑化法出口戦略 粉飾決算をどうするか?

不良債権処理の現場において企業会計の粉飾決算は当たり前のように存在します。粉飾決算は商法違反であり特別背任罪の刑事罰もある重大な犯罪ですからあってはならない事なのでしょうが、中小企業の場合、珍しいことではありません。

銀行との取引約定や金銭消費貸借契約等で借入人が提出する権利能力は事実であり、決算書類資料は正確性があることを「事実の表明及び保証」(表明保証=レプワラ)することを求められます。よって、粉飾決算の事実を銀行に告げると、銀行は約定違反に該当するため一括で返済するように請求することが出来ます(請求期失)。

しかし、契約書がどうであれ、銀行担当者は経営者を信用して融資実行したり、その後の金融支援につき色々とサポートして来た訳ですから、その信頼の前提となる決算書が虚偽であり、騙されてきたことが知らされた瞬間、憤りと空漠感等も入り混じり、支援姿勢から回収方針へ一変する可能性が高いと思われます。

今回、金融円滑化法最終年度となり、リスケ要請中の企業の出口戦略を検討する場合、粉飾決算問題をどうするかにつき、中小企業診断士の立川敦史氏が「出口戦略における協議会等の活用とコンサルティングの留意点」(銀行研修社 銀行実務2012年10月号)で「多くの中小企業は粉飾決算を行っており」「その実態を知ったときに金融機関はどこまでの覚悟を持って、中小企業を支援するのか、明確な基準を持つべきである」と指摘されています。

多くのコンサルタントや専門家が事業再生や会社整理に接するとき、粉飾決算と資産の陳腐化で貸借対照表が大きく歪んでいる実態を把握するところから仕事が始まります。金融機関においてもリスケ要請があったときに、損益計算書、キャッシュフロー計算書、資金運用表を含む財務分析を通じ、各種比率や回転率の変化が気になり、悪化の原因を追及します。

しかし、この決算書おかしくありませんか? と云う訳にはいきません。確実な証拠がないと「粉飾決算」と断定することはできません。サービサー会社がデューデリジェンスを実施するとき、同時期に複数行から決算資料が提出されますので、比較的簡単に粉飾決算を見抜くことができるのですが、銀行単独では資料の比較は出来ませんから、時系列に整理された用意周到な決算書を出されたら、信じるしかないでしょう。

でも、リスケ要請した以上、その企業は新規融資を受けることはまず無理ですから、売掛・買掛等の商事債権取引でサイト負けしないようにするか、事業主等の借入で運転資金を繋ぐことになります。事業は縮小しますが、じっと売上が増える工夫や仕掛けを継続するしかありません。

そして、何とか余剰キャッシュフローが出るようになれば、抜本的で実現可能な再建計画を銀行と協議するとともに過去の決算についても修正することを告白すれば、金融機関も請求期失を見送ってくれる可能性はあると思います。実態を共有すれば後はその損失を今後何年間で埋められるか、或いは外科手術を伴う会社再建策が検討されることになるかもしれません。

特に許認可事業や入札参加資格が必要な業種は事業継続の必要最低条件を維持するために粉飾決算しないと破綻する切羽詰まった背景もありますから、若干の情状酌量の余地があってもいいのではないかと云う気がします。

粉飾決算を許すことは金融制度の骨格を否定することになりますから、金融機関としてはコンプライアンス重視は当然です。しかし、それで請求期失しかないことになれば、多くの中小企業の企業価値が損なわれ、その結果、金融機関の損失も膨らむことになりかねません。

よって、私も金融機関の「覚悟」となる「(粉飾決算の場合の)支援基準」を示して頂ければと願っています。

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