サービサーの今後の展望について

日本にサービサーが誕生し13年しか経っていませんが金融機関の不良債権問題が落ち着いたように見える中で、今後サービサーはどの様な展望が待っているのでしょうか。

1980年代の米国において、不動産バブル崩壊(住宅、リゾート含む)で貯蓄貸付組合(地域金融機関)の約1/3が破綻したとき、その不良債権の受皿として整理信託公社(RTC=Resolution Trust Corporetion)が1989年に設立され、その不良債権の管理回収を受託するサービサーが活躍したことがありました。

日本のバブル崩壊時に外資系の不動産投資ファンドが黒船のようにやってきて、地価暴落で資金繰りに困っていた窮境企業から放出される優良不動産を安値で買いたたいていました。当時、投資ファンドが弁護士の専任業務である債権回収を行うに際し、「ローン・パーティシペーション」取引(融資債権者の契約はそのままで、融資金を受取る権利や回収リスクは譲受先のファンドにある)という奇妙な理屈をつけて回収行為を行っていました。ロットの大きい不動産を短期に転がすハゲタカ回転ビジネスで、国内に競合先がいないため、「濡れ手に粟」の利益を上げていたのです。

このままでは日本の優良不動産が外資に乗っ取られる危機感と或いは国内企業のビジネスチャンスになりえる等の目端が利いた考えもあり、自民党の議員立法としてサービサー法が1998年10月、金融再生六法案の一つとして成立しました。

この当時、私は親会社でサービサーの設立準備やそれに伴うヒト・モノ・カネの手配を担当していましたが、当初は投資資金が要らない受託型を検討していました。しかし、会社設立後、サービサーの前線より金融機関の債権売却ニーズが高いこと、受託型だと外資系ファンドの要求水準が厳しすぎること等を聞かされました。親会社自身が事業性債権の不良債権問題に苦しんでいましたし、金融機関も不良債権買取資金を融資することは否定的でしたので、外部の不良債権は請求債権より安い価格で買取可能であること、買取資金は投資額ですから投資額に対する回収可能性の回収トレンド予想や内部収益率、回収期間と経費を予想した四半期単位の事業計画等を説明しながら、グループ戦略のコンセンサスを得ることに苦心しました。

日本のサービサーの代表格は整理回収機構(RCC=The Resolution and Collection Corporation)です。RCCは再生対象の金融機関の受皿として、また健全金融機関の不良債権を買取するコレクションとサービシングを行うサービサーとしてアメリカの「受託型」とは違うビジネスモデルを確立していました。不良債権処理を早期に進めるためバランスシートから切り離し有税引当金を無税償却したい金融機関のニーズが強かった時期で、投資資金を確保できた「買取型」サービサーの急成長が始まりました。

一方、この間、受託型のサービサーもグループ内を統合し従業員が1000名を超える大手サービサーへ変貌したところもあります。(受託型についは「銀行系受託型サービサーの苦悩」をご参照ください)

しかし、買取型サービサーもメガバンクの不良債権処理終結宣言(2005.5金融庁)以降、金融機関が債権譲渡する案件が減少してきました。そして2008年9月のリーマンショック、同年12月の金融円滑化法と続き、不動産担保中心に事業を展開していた一部サービサーが担保価値の下落による損失発生で経営危機や法的清算に追い込まれて行きました。特に金融円滑化法以降は、破産や民事再生申請を行った破綻債権しか債権譲渡されない状況になりました。そして、金融機関は窮境事業者が細々と営業していて返済財源がない場合でもサービサーに債権譲渡しづらい状況が3年間も続いています。

また、現在でもサービサーは大小含め約100社あり大半は買取機能を持っています。銀行系受託会社や不動産中心の受託会社もありますが、金融機関の不良債権処理の競争入札に招聘されるサービサーは3~5社が普通で、多い場合でも10社位です。競争入札で最下位になれば次回招聘しないケース(入札候補者との入替)も増えています。また、それ以前に、入札にすら参加できないサービサーも多数存在しているのが実情です。

加えて、市場に出される不良債権の減少が入札価格の高騰を招いています。民事再生案件や分割返済中案件で長期返済計画がある場合、業種、債務免除率、返済計画等から倒産確率や資金運用利回りも考慮し、債権の値付けを行いますが、年々、返済期間を長めに評価するケースが増えています。例えば、民事再生計画では債権放棄されなかった部分を5~10年の分割で返済しますというケースが多いのですが、サービサー各社はこれを3年分評価するか、5年分、或いは6年分と云ったように評価額(仕入額)を高く設定し入札に臨む事例が増えているのです。

民事再生でも4割近くが再申請や破産に向かうなかでサービサーがリスクを取らないと仕入れが出来ない、仕入れが出来ないと回収ラインが維持できない・・・という状況にありますので、今後、高値仕入れによる貸倒引当や貸倒のロスが発生するなど収益が悪化し経営不振に陥る等、統合や廃業も増えると予想されます。


但し、買取債権のストックがありその中でも長期分割中債権を多く保有するサービサーは安定的に回収益が発生するストックビジネスも育ってきていますから、一括回収の回転ビジネスだけに頼らない事業展開が可能になって来ています。

さて、こうした買取型サービサーですが、まず外部環境として金融円滑化法の今年度終了による影響がどのような進展を見せるかです。当然、債権譲渡は増加するでしょう。しかしながら金融円滑化法下のリスケ債権(返済条件緩和債権)の多くは地域金融機関が保有しています。地域金融機関は不良債権処理に際しても不良債権比率を下げる数値目標は設定されず、地域密着のリレーションバンキングが求められて来ました。金融円滑化法でも貸倒引当金圧縮効果の恩恵も受けて来ました。よって、国内全体の不況が続く中では、地域経済や雇用の確保に機能しているシステムが崩壊しないように延命策が講じられる気がします。

しかし、リスケ債権が60兆円超もありますので、まずは再生計画で実現可能な抜本的計画が策定されていない、または計画の進捗率が著しく低いような企業、または法的再生を目指した方が地域の活性化につながる企業(例えば供給過剰の産業)等から不良債権処理が始まると思われます。

一方のサービサー側も債権放棄だけを中心とした一括回収だけでは競争優位性を保つことは難しくなって来るでしょう。当然ながら、債権譲渡手続きの正確で迅速な業務処理能力や経験豊かなサービシング能力は絶対要件であり、これがないと法務省や金融機関から信用失墜させられるだけではなく、債務者企業も不信感を抱きます。加え、今後は、金融円滑化法施行後、金融庁が金融機関に求めてきたコンサルティング能力を含む再生支援機能も承継することが前提になってくるでしょう。そして、債務者企業が新しいメインバンクからエグジットファイナンス等を受けられる形でサービサーの役割を果たすことが求められると思います。

また、再生や事業承継に関する業種毎の再生支援ノウハウや再生法務の提案力も求められたり、スポンサー探しも含めたビジネスマッチング能力も期待されるようになるかもしれません。つまり、裁判所を通さない中小企業等の私的整理の最終処理の生の情報がサービサーには蓄積されて来ていますから、いずれは法的再生の配当率との比較が出来るようになると考えられるからです。

そして、近い将来は保証協会サービサー等の公的サービサーが受託する大量の長期不良債権処理とその損失をどうするか、課題を先送りできなくなりつつある日本で大きな問題になってくるでしょうから、それに向けた取組も必要になると思っています。

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