受託型銀行系サービサーの苦悩

昨年末、銀行系サービサーりそな債権回収が廃業し清算結了されました。住宅ローンに強いシステム投資もきちんとしている実需型のサービサーでした。しかし元々親銀行が有する遅延債権の管理回収業務を受託することをメイン業務にしていたため、デフレ時代の連結決算における経費圧縮が廃業の原因ではないかと憶測しています。

サービサーは銀行等の債権者から債権を譲受する「買取型」と債権者から管理回収を受託する「受託型」、そしてその両方を行う「総合型」があります。受託型でも外資系、銀行系、組合系、流通・コールセンター系等があります。このうち不良債権処理問題が下火になった後、外資系の撤退が始まりました。大型の不動産担保付き債権が減少したためでした。そして今回の大手銀行系サービサーの撤退となりました。

同じ系列内で同じ債権の管理回収を継続することは正確な情報伝達と価値判断が確保されますが、そもそもの判断基準である発想がグループ内では平準化されていますので組織の常識内で処理されることになりがちです。これを弊害と呼ぶのは穿った意見になるかもしれませんが、業種、業界、系列が違うと取組姿勢からがらりと違うことが多々あります。

サービサーが始まった頃、銀行と信販会社が共同でサービサーを立ち上げ銀行の住宅ローンの遅延債権を信販出身者社員に任せたところ回収率が5%以上もアップしたという業界では有名な成功事例がありました。「金融村」社会でも夫々の家風があり、それに気づいたり理解するには結構時間がかかるものです。よって、同系列の同じ債権だけを受託していてもノウハウの幅を広げることは難しいかもしれません。

また、近い将来、消費税がアップしていくことも障害になります。回収額に応じて支払われる回収手数料には消費税が発生します。サービサーの回収手数料は売上収益になりますが、債務者から受取る回収金からは消費税をもらえませんので粗利率の低下に直結します。通常の事業でも粗利を1%改善するためには意識的な策を講じなければなりませんから、一気に3%も上がっては極めて厳しい状況になりますし、まして、将来に亘り大幅アップする見通しですから大変な問題です。

加えて、これはサービサー法が改正されなかったための弊害の一例ですが、サービサーは全ての債権の管理回収が出来るわけではありません。民主党や弁護士会の反対もありサービサー法で決められた範囲内の債権しか回収行為が出来ません。それは売掛債権とか紛争性がある債権は債権が確定しない面もあるからプロの法律家である弁護士の業務領域になるとの考えが前提にあるからです。

しかしながら、銀行が有する貸付債権、手形債権等は回収できるのですが、例えば社債、為替デリバティブ、ユーザンス手形、手数料等は対象外になります。このため銀行本体では問題なく管理回収ができるのに、サービサーに移すと回収行為さえ取れないという矛盾が過去から続いているのです。銀行は子会社に全部委託が出来ないので非効率な二重管理になっています。

この10年間で中国や東南アジアとの取引開始や現地法人化が進み、為替変動も大きくデリバティブの損失が増えたり、低利の融資中心の金融から手数料確保になる社債の拡大へと、銀行の取扱商品も変化しているため、わずか10年前に出来たサービサー法さえ現実に対応できない事象が起きているのです。このままでは受託型銀行系サービサーは出向者の受皿子会社としての存在価値しかなく、その場合でも、労働集約型産業ですので消費税相当分以上の人件費削減が必要となりますから、モチベーションアップは期待できなくなります。

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この記事へのコメント

ところざわGパン行政書士
2012年04月23日 13:07
ブログ開設おめでとうございます。U氏しか書けないものを期待しております。今後とも、お互い切磋琢磨していきましょう。
品川のよっちゃん
2012年04月25日 22:46
ぜひ継続的に、ストレートな意見を開陳し続けてください。
私も最近更新頻度が落ちていますが、関連コメントを掲載していますので、よろしく。
http://eyochan-home.cocolog-nifty.com/blogdayo/

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  • プラダ トート

    Excerpt: 受託型銀行系サービサーの苦悩 所沢LBS 行政書士の事業再生ー詩人の経済学 /ウェブリブログ Weblog: プラダ トート racked: 2013-07-09 04:19