遺産分割協議における判子代 No.1

最近、遺産分割協議における「判子代」はいくらぐらいですか、という質問を受けるケースが増えた気がします。「判子代」という考え方は、不動産を売却するとき、抵当権や賃借権等の担保権が不動産登記簿に設定されている場合、競売配当になったとしたら債権の回収が出来ない債権者に対し、その担保抹消料として支払われていたものと、私は記憶しています。

不動産を売却することで、担保権者の債権を全て返済できる場合は判子代とは言いません。しかし、債権の方が多い場合は、担保を設定した債権者に全て返済することは出来ませんから、抵当権の順位等で返済計画を立て、債権者の承認を得る必要があります。

この場合、後順位の担保権者に対し、判子代という低額の返済を行うことで担保を抹消してもらい、不動産の任意売却を進めることになります。後順位担保権者が判子代で了解する理由は、任意売却が出来ない場合は、担保権の実行として競売になり、競売時の売却価格は任意売却と比べ8割~5割近くまで低下する可能性が高く、そうなれば、債権者全員の回収額が減ったりなくなったりするからです。

ですから、任意売却の場合、判子代の原資は優先配当権を持つ一番抵当権者の回収額を減らすことになります。一番抵当権者は競売配当予想額と任意売却での返済予想金を比較して、経済合理的な判断を行うことになります。

一方、相続登記において、遺産分割協議書に全ての相続人が署名捺印する場合にも、「判子代」という言葉が使われています。そして多く見られるケースは、被相続人やその遺族が居住している不動産を、居住している一人の相続人名義に相続登記する場合です。

遺産分割では現預金や有価証券等の分配は速やかに実施されますが、不動産は親族が引続き住んでいる状況であれば、直ぐ売る必要もなく、相続登記は登録免許税や手数料等の費用もかかり、関係者の戸籍謄本等も必要で手間暇がかかりますから、先送りされ、放置されるケースが沢山あります。そして、世代交代が進んでいます。

直系の相続人は、代替わりになっても代襲相続されますから、相続人の数は増えてしまいます。自分のルーツを探すように、名前も顔を知らない親族が多数登場することも珍しくありません。一般的には、祖父母の相続登記がなされていない場合に、「判子代」が登場することが多いようです。

特に、日本は高度成長期に民族の大移動が起き、農村部から都市部に人が移り、昭和初期から団塊世代までの世代が故郷を離れ、兄弟姉妹が各地に核家族として分散した結果、郷里の実家の相続登記がなされず登記未了が残されたままになっている気がします。これを解決していくのは大変な事だと思います。

この場合、「判子代」やその対価の妥当性、つまり合理的な水準につき、どう考えるべきなのでしょうか?

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