金融円滑化法 地域金融機関との協議

金融円滑化法最終年度となり累計229万件、63兆円あるリスケ債権の処理がどうなるか懸念されていますが、円滑化法が失効しても金融庁マニュアルの「1年以内に経営再建計画が策定される見込みがあれば貸出条件緩和債権に該当しない」措置が残るため、影響は限定的との解釈があります(大和総研2012.5.10)。

この解釈は、金融円滑化法と金融庁マニュアルの改正が行われる前の2008年にリスケ債権の判断基準が緩和(概ね3年後正常化→概ね5年、5年~10年で計画通りに進捗している場合を含む)されたときにリスケ債権は増加しているし、このときに正常化にシフトした債権は1.4兆円に過ぎず、リスケ債権は金融円滑化法以降に増えたわけではない、ことを根拠にしているようです。

むしろ中小企業庁のセーフティネット保証制度(緊急保証制度)やセーフティネット5号保証(全国的に業況が悪化している業種、つまり全業種が利用可能)で資金調達や保証に活用されていた金融支援が廃止されることの影響が大きいとしています。また、中小融資に対する100%保証を今年度末で廃止するとの報道もあり、そうなれば金融機関の審査は厳しくなるでしょう。リスケ中であれば新規借入は出来ませんが、セーフティネットで保証枠が広がることで資金繰りに活用していた部分が今後使えなくなることは中小企業の経営を厳しくします。

:2011年度末の全国保証協会の保証残高は34.4兆円も2007年度より5兆円も増加しています。セーフティネット保証か中小企業の資金繰りを下支えしていたといえるでしょうが、一方では金融機関の融資姿勢を問題視する意見もあります。リーマンショック後の景気後退や大震災による倒産防止策による保証で不良債権予備軍が全国保証協会に集約されている気がします。

余談ですが、中小企業向け融資だけでなく住宅金融支援機構も要管理先以上のリスク管理債権は4.3兆円もあります。当然優先配当がある抵当権が担保されていますが不動産価格も低迷していますので全額回収は難しい状況です。また、これら公的機関の債権の時効は10年ですし、基本的には債務者が法的整理手続きを取らない限り債権を免除してくれません。そのため償却すべき不良債権がなかなか表面化せず、不良債権処理が先送りされています。よって、近い将来多額の損失処理が必要となることは間違いありません。

さて、金融円滑化法やセーフティネット等の金融支援策は財務キャッシュフローでの輸血に役立ったのですが、本業の営業キャッシュフローの改善には直接寄与しません。中小企業の課題は売上低迷であり損益分岐点を切り下げる縮小均衡に向け努力してきました。そして、事業継続のためには縮小し続ける国内マーケットの中で、同業他社の廃業または破綻を待つ、またはM&Aすることが大きな課題になってきています。或いは海外への進出や移転も考えなければいけないとの話も聞きます。抜本策となればそうした中小企業存続の課題を把握しコンサルタントする機能が金融機関に求められてきたのでしょう。

しかし、残念ながら、金融円滑化法のリスケ債権の8割を保有しているのは地域金融機関であり、これらの金融機関は企業マッチングサービスも海外支店展開も期待できません。特に地方の場合は情報が限られており支援者たるスポンサーを探すことが難しいそうです。そのことが中小企業の出口戦略を閉鎖的にし、後継者不在もあり企業価値がある間に廃業する経営者が増えているのでしょう。

よって、金融円滑化法最終年度の局面において、経営者は中期ビジョンを想定し地域金融機関と協議しどこまで支援や協力を得られるか確認しておいた方がいいでしょう。特にメガバンクがメインである中小企業の場合は海外進出等の情報提供も可能ですし、特に下位行に地域金融機関が複数いるときはトリガーを引くことにならないように注意を払っていますので積極的に相談すべきと思います。

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